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MODEL STORY

タイトルなんてどうでもいい。21日目:コンプレックスを持つモデルたち

2020年4月22日

海外モデル契約90日

21日目:コンプレックスを持つモデルたち

 

新しい街に引っ越しきて4日目になる。

前のモデルアパートがパリピ美女たちの集まりだと思っていたけど、今のところもそんなに変わらないことが判明した。

むしろメンズモデルたちも一緒に住んでいる分、夜遊びに行く頻度は上がっている気がする。

昨夜はルームメイト6人初めて揃ってモデルナイトに行ったんだけど、

この前の積極的なブラジル美女にお持ち帰りされた侍は昼前に帰ってくるし、

エキゾチック美女は明日撮影だから夜中2時には抜けるって言ってたはずが、楽しかったのか結局朝までいて、クラブからそのままスタジオに直行するし、

みんなで踊っている時に、酔っぱらった勢いでまさかのチューをしてしまったリアルバービーとマフィア子分は朝から気まずそうにしているし、

なぜこの2人がそうなるんだ。

そしてここは猿の集まりなのか?

チューするのは自由だけど、

完全にアパート全体に気まずい空気が流れていて、無駄に私たちはその空気に巻き込まれている。

あいのりに強制参加させられているみたいで

まあ私は平和に過ごしたいから番組では一番つまらない奴になると思うけど。

 

夕方、リアルバービーと私が部屋でくつろいでいると、同じ部屋のエキゾチック美女が撮影から帰ってきた。

仕事でヘアメイクをしてもらって、更に美女になっている。

リアルバービー:「今日のヘアメイク綺麗だね~!」

暗めのアイシャドーをしていてるからか、彼女の明るいグリーンの目が際立っていて、黒いロングヘアは緩く巻かれて、いつもの可愛らしい彼女ではなく、超絶セクシーなイラン美女になって帰ってきた。

元がいいからこんなにメイクが映えるんだな。

羨ましすぎる。

こんな綺麗だったらモデル業も怖いものなしだろな。

そんな彼女がなぜか元気がない。

いつもの明るいお転婆娘の姿はなく、様子がおかしいことはすぐ分かった。

どうしたか聞いてみると、

今日は下着の撮影だったみたいで、撮影後スタジオのスクリーンで自分の下着姿を確認した時に

太って写っていたと言う彼女。

ポージングもなってないし、自分が理想としている体からは程遠かったみたいで、

私ってこんなふうに見えてるんだって絶望的な気持ちになったらしい。

自分の体が嫌い、もう仕事に行きたくない、今日の写真が公開されてほしくない、

私の羨む考えとは真逆で、今にも泣きだしそうな顔をして言うめちゃくちゃ綺麗な美女。

あなたレベルの美女でもそんなコンプレックスを持ってるんですね。

そんなことないよ、気にしなくていいよ、綺麗だよ、

と彼女のことをなだめるリアルバービーと私。

 

でも正直彼女の気持ちは痛いぐらい分かる。

写真の中の自分の姿を見た時に

え……自分超おブス……。

って思うこともあるし、

こんな太ってたっけ……とか

脚太っ!短っ!

顔パンッパンやな…

お尻垂れてるし………

姿勢悪すぎ……

ウェストきつくてズボンはち切れそうになってる……

ほうれい線が……

早押しクイズ並みに嫌な部分ばかり見えてしまう。

日本にいる時も、お洒落して上機嫌で出かけたはずが、

電車の窓から、あ~綺麗だな~って外の景色に見惚れていてそのままトンネルに入った時の窓に映る自分の顔を見て一瞬にして現実に引き戻されたり、

休日にスッピンで髪の毛も気にせず、ネットフリックスで話題になっているホラーでも見ようかと思ったら、

映画の場面切り替えでいきなり暗くなるパソコン画面に反射する自分の姿が一番ホラーだったり、

オーディションに着くや否や、他のモデルたちを見て

「あー落ちる気しかしない。帰りたい」って思うこともあるし。

よくこんなルックスでモデルとして食べていけてるな……

と自分を蔑む日々。

ベッドに座りぼーっとそんなことを考えていると、ダンディーが私たちの部屋に顔を出した。

ダンディー:「今夜ここに俺ら行くつもりなんだけど、一緒に行く?ここのディナー美味しいらしい。」

モデルナイトの誘いだ。

エキゾチック美女に気を取り直してもらうためにもみんなで行くことにして、

昨夜一睡もしてない彼女はとりあえず仮眠をとり、夜私たちはみんなでバーに向かった。

 

***********************

高級そうなバーに入り、席に着きディナーをオーダーする私たち。

少し離れた所に、同じ事務所だけど違うアパートに住んでいるレディースモデルたち3人と、いかにも調子のよさそうなイケイケな若い男が、立って話していた。

エキゾチック美女:「彼おもしろいの!」

リアルバービーとエキゾチック美女もその男を知っているみたいで嬉しそうにハグをしに行く。

リアルバービー:「あの子が新しいルームメイト!」

こっちに指をさしてきて、私も立ち上がり挨拶をしに行く。

ハイブランドなシャツを着ていて、身なりのちゃんとしている育ちの良いタイプに見えるこのイケイケな若者。

そこそこイケメンで、口が上手い彼は面白くて、ムードメーカーのような存在で美女たちとイチャついていたんだけど、

何でかは分からないけど、私はあまりいけ好かないタイプで、特に何も言わずみんなの隣にぼーっと突っ立ていると

彼に関心を見せないのが気に食わなかったのか、新人の私をイジりだす若者。

「これはどう思う?」って他のモデルたちに1人ずつ優しく意見を聞いた後に、

私が喋ろうとすると、「あ~君の意見は聞いてないや」と言ったようなイジりを混ぜ、他の美女たちはそれを見て笑っていた。

美女たちを自分の味方に付ける匠な手法だな。

そのやり取りが何回か繰り返され、オーダーしたご飯が運ばれたとメンズたちから呼ばれる私たち。

よかった席に戻れるとホッとする私。

ご飯はいつも通り美味しくて、私は途中トイレに行くために席を立った。

 

面倒くさい男だったなー。

手を洗いながら、まぁ別に気にしなくてもいいやって思って

ドアを開けてトイレを出ると、その面倒くさい若者が立っていた。

また私をイジりに来たのかこいつは?

挨拶だけして通り過ぎようとする私を止める彼。

イケイケ若者:「ごめんね、さっきは。あんなイジるつもりなかったんだ別に。」

さっきとは別人の様に優しい。

私:「別に気にしてないから大丈夫だよ。」

適当に答えて、テーブルに戻ろうとすると彼が話し出し、私は戻れなくなった。

どこ出身なの?とか、もうこの街は慣れた?とかそういう質問から始まり、

10分ほど話し、流石おもしろくて口の上手い彼に私は気を許し始めていた。

そんなに嫌な奴じゃないのかもしれないな。

そのまま話の流れでさらっと伝えてくる彼。

イケイケ若者:「モデルを落とすのは実は簡単なんだよね。

こんなに綺麗にドレスアップしてるけど、実はそれは外側だけで、

君らはコンプレックスの塊なんだよな。」

って思ったけど、やっぱり嫌な奴かもしれない。

全く悪気がないような言い方で話し続ける彼。

イケイケな若者:「いつもルックスを基準に競っていて、見た目を拒否られて、自分に自信がない子ばっかり。

だからお姫様みたいに扱ってあげて、君が一番綺麗だよって言ったらすぐに落ちる。

女ってそんなもん。」

夕方のルームメイトの美女たちとの会話を思い出す私。

そのまま彼は言いたいことを言えてスッキリしたかのように立ち去り、私は1人ポツンとトイレ前に残された。

やっぱり嫌な奴だった。

親のすねかじってそうな、私たちの業界もそんな知らない奴に言われて悔しかったけど、

彼がモテているのはきっとモデルたちの扱い方が上手いからであって、

私は何も言い返せなかった。

こんなに楽しくないモデルナイトは初めてだ。

 

テーブルに戻り、お酒が入りハイテンションになっているルームメイトたちに伝える。

私:「疲れたから先に帰っとくね。」

 

帰りのタクシーの中、モヤモヤした気持ちで1人暗い外を眺めながら思った。

図星だわ。

 

モチベーション:

★1

ピュア度:

★★★★★★★★★★★★★★★15

モヤモヤ感:

★★★★★★★★★★10

このストーリーは実話に基づいています。

前回のお話↓

タイトルなんてどうでもいい。20日目:私の初めてのティンダ—経験

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