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NOMADEL

MODEL STORY

タイトルなんてどうでもいい。 27日目:過酷さと夢の狭間

2020年4月28日

海外モデル契約90日

27日目:過酷さと夢の狭間

 

朝9時。ロケが始まった。

 

昨夜11時、何とか飛行機の出発時刻に間に合い、

夜中現地に到着して、そこから車で3時間ほど運転。

どんどん田舎の方に進み、暗くて険しい山奥に入っていく車。

凄い所でロケがあるんだな…。

そして寒い。もの凄く寒い。

朝方だし山の中だし、気温は1度。日本から持ってきたジャケットを羽織っているんだけど、既に手は冷え切っていて、

やっとのことでホテルに到着し、チェックインを済ませ2時間ほど仮眠を取った後に、現場入りする私とルームメイトのモデル2人。

撮影クルーは既に準備を始めていた。

 

すごい人…!

 

他のモデルたちとは現場で合流して、100人態勢の撮影で、

メインモデルが7人。私の事務所から3人と、他事務所のレディースが2人、そしてメンズが2人。

動画の撮影だからかスタッフも多くて、もう現場が人で溢れかえっていて大変なことになっていて、メイクさんも確実に足りてないし、

何もできずに待っているモデルが多すぎる、なんとも時間ロスの多い現場だった。

オーガナイズがなっていないのは昨日のフィッティングだけじゃなかった…。

 

昨日会ったデザイナーやスタッフたちも既に現場入りしてて、

各モデルに服を手渡しているんだけど、モデルの人数が多すぎて

まさかの誰がどのサイズを着たのか分からなくなっているデザイナー。

メモらなかったのか?

終いには「あなたはこれでも着てて!」って言ってメインモデルの私たちにSサイズかMサイズか分からない白Tシャツを渡してきた。

これでも着ててって…

そして結局SサイズもMサイズもそんなに変わらないから着ている私たち本人もどっちを着ているのかが分からない。

昨日の私たちの時間を返せー!!

 

その後撮影が始まったんだけど、極寒の山奥でそのぺらっぺらっな生地のTシャツ一枚で撮影をする私たち。

朝11時の時点で4度とかで、もう震えが止まらず寒がりの私は終始泣きそうになっていて、

私の脚の小指が死んでいる。

 

小学校1年生の冬に、雪が降りだして、担任の先生含めクラスのみんなと外で雪合戦をした思い出がある。

他の生徒が楽しそうに雪のボールを素手で作ってキャーキャー言いながら投げ合っている中、

寒がりの私にとってはなんにも楽しくない時間で、ただただ寒さに耐えないといけないことが辛すぎて、

徐々に手と足の指の感覚がなくなり、そのままミニカリナは

「せんせーー!!!!手と足がなくなっちゃーう!!!」って大泣きしながら言ったのを覚えている。

教室に戻らせてもらって温かいヒーターの真ん前に座り、なくなりそうだった手と足が徐々に戻り、

ここが一番安全だ、と安心する6歳のミニカリナ。

 

寒がりとか暑がりとかが遺伝するかは分からないけど、うちは両親もかなりの寒がりで、

私が生まれ育った奈良県の山奥で冬を乗り切るのは私たち全員にとってなかなか過酷な試練。

蛇口からは氷水が出てきて洗顔の際は冷たすぎて顔がヒリヒリするし、外のパイプが凍結して水が出ないことすらあったし、

車のフロントガラスには霜が付着して真っ白で何も見えなくて毎回運転前に取らないといけないし、

庭においてある犬用のボールの水は完全に凍っていて、それを犬が飲むと言うよりもやは舐めて水分補給しているし。

どれだけ頑張って対策を取っても、これでもかというぐらいに冷え込む家。

 

そんな寒がりな私にとって、極寒の夏服での撮影は地獄。

まさに地獄。

モデル1人だけやたらと顔色が悪いし、尋常じゃないぐらい1人震えている。

 

モデルの仕事はシーズン前に撮影を済まさないといけないから、季節が完全に逆になることが多くて、

真夏の炎天下の中、ダウンジャケットの撮影もあったんだけど風も通さないジャケット下で完全にサウナ状態になっている体。

デトックス効果が半端なくて、撮影後2キロぐらい痩せたんじゃないかって、

ちょっとスッキリしたんじゃないの私って。

かと思ったら真冬の氷点下ギリギリの中、ロケ地が遊園地で半袖半ズボンを着て

水をガンガン浴びるウォータースライダーに乗っての撮影だったり。

「水に浴びてキャーって楽しんでる感じでお願いします!」って指示が出されるんだけど、

可愛く演じている悲鳴が途中から本気の悲鳴に変わる。

 

で、この山奥での撮影がま~段取りが悪くて、

昨日のフィッティング並みに無駄な作業がいろいろあって、極寒の中Tシャツ一枚で外で待たされる私たち。

お願いだから早くカメラを回してくれと願うばかり。

 

そのまま7時間ほど耐え、夜何とか無事に撮影が終わり、ホテルに戻る私たち。

とんでもないロケだったと考えながら、冷え切った体を温めて一休みする私。

寝不足と寒さで体力の消耗が半端ない。

ベッドに横になって携帯を見ると、ちょうどこの前の、湿疹に襲われた時の作品が出来上がったと監督から連絡が入っていた。

監督:「もうすぐで公開されるから、楽しみにしててね。」

私の海外初の大きな案件が公開される。

どんな出来になってるのかなーとドキドキしながら30分程待ってると、監督の言葉通り動画はアップされた。

流石、国内アカデミー賞にも映画が選ばれた監督の腕の良さが存分に出ていて、モデルをした私本人もびっくり。

表情の捉え方から、光の入り方、音楽まで、すべてが完璧で

こんな素敵に撮ってくれてたんだ、と動画を見ながらもう言葉すら出ない私。

で、その動画は国内限定公開かと思ったけど、海外の本社のオフィシャルインスタグラム、フェイスブック、ユーチューブに大々的にアップされて、まさかの全世界放送だった。

え……こんなデカい仕事だったんですか?

キャンセルしなくて本当に良かった。

謎の湿疹と頑張って戦って本当に良かった。

日本の知人たちからも早速「見たよー!びっくりしたよー!」と次々と連絡が入り、

瞬く間にビュー数、コメント数、シェア数が伸びる動画。

世界中の人たちからメッセージを頂いて、

若き優秀な監督が作り出した作品に、自分が関われたこと、そして知らない人たちの心をこれだけ動かしてることに感極まる私。

モデルをやっていて良かった。

海外に出る価値があった。

聞いてる側も辛いことしかないんじゃないかその業界ってきっと思っているかもしれないけど、

過酷さの中にもやりがいがあって、結果が出たんだと心から感じれる瞬間で、もの凄い達成感だった。

 

その動画は250万回再生を記録した。

アドレナリンマックスでまた寝れない夜になりそうだ。

 

モチベーション:

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★25

ピュア度

★★★★★★★★8

私の寒がり度:

★★★★★★★★★★10

このストーリーは実話に基づいています。

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