海外モデル契約90日
4日目:公開処刑セクシーダンス
平日朝10時。
ルームメイトの美女たちが徐々に起きだして、私はちょうど朝一にジムにでも行こうかと思って着替えている時だった。
みんなの携帯が一斉に鳴った。
ひょろひょろロシア美女:「オーディションだって!40分後にピックアップって!」
マネージャーからのメッセージと共に、やばいやばい!と慌てだすルームメイトたち。
40分後??今から??
ジムウェア着たところなんですけど私...?
その状況に全くついていけず、棒立ちの私。
ひょろひょろロシア美女「先にシャワー使うね!」
こういう時にシャワーがシェアとなるとどっちが先に浴びるかとか、
化粧するのは洗面所以外でするとかも考慮しないとダメだし、
ルームメイトが気を遣って5分でシャワーを出てくれて、私もそこから猛ダッシュでシャワー浴びて、
急いで服選んで、髪の毛乾かして化粧して、
隣の部屋の美女2人もバタバタしている様子が聞こえてくる。
もう焦ってるから暑すぎてシャワー出たばかりなのに汗かいてて、ジム行ってるのとそんな変わらないんじゃないかって思って、
何とか40分ぎりぎりに準備が完了し、迎えにきた事務所の車にみんなで乗り込んだ。
朝からいい運動だわって思いながら既に私は車でぐったりで、
マネージャーから届いたオーディションの詳細を見るんだけど、専門用語と言うか慣れない単語が多すぎて、何のオーディションかもさっぱり。
流石他のモデル3人は何ヶ国も海外契約をこなしているから慣れていて、車の中で詳しく教えてくれた。
まず、オーディション情報は前日の夜か当日の朝に来ることが多いらしい。さすがに40分後にピックアップというのは珍しいみたいけど、常に動ける状態にしておくのがベスト。
その日オーディションがないっていうのは伝えられることはなく、午後1時ごろを過ぎても何の連絡もない場合は何もない日と想定して、そこから一日の予定を組んで動き出せるらしい。
毎朝みんなゆっくりしてたのはそういうことだったのかってその時私はようやく気付いた。
やたらと午前中何もしない子たちだなって思ってたけども。
昼過ぎに、今日オーディションありますか?ってマネージャーたちに聞いたところで、
「今のところはない」
っていう、イエスでもノーでもない返事がくるらしい。
「私たちモデルは暇人で、仕事を待つ以外することないって思われてるんだよきっと」
隣に座っているソフトフェイスなブラジル美女が可愛く笑いながら言ったけど、まさにそういうことかもしれない。
関西と東京でモデルをしていた時もそうだったけど、この業界は次の日の予定が分からない。
バイトをするにしても、いきなりオーディションが入る可能性があることを理解してくれる所を探すんだけど、
「店長、明日休みます」って言って
「オッケー♪」ってなる所なんてまずないし、
渋谷とかにモデルばっかりが働くカフェやバーがあるんだけど、結局融通が利くバイト先に私たちモデルが集まる。
学業が加わると更に大変で、大学在学中は明日授業に出れるのか出れないのかも分からないから、私は自分の学生証をよく同じ授業の友達に預けて代わりにスキャンしてもらって、出席扱いにしてもらっていた。(こらっ)
そのおかげで単位が取れたと言っても過言ではないから、大学の友達には本当に感謝。
気強めベネズエラ美女:「今日はCMのオーディションだから時間かかるだろな~。」
CM案件の単価が高いのは日本と同じ。その分競争率も高くなる。
1時間ぐらい運転して車がオーディション会場に到着。
ちょうど隣に止まったワゴン車からも5人モデルが下りてきて、
スラっとした海外の子たちがヒールを履いてロングヘアをなびかせながら会場に向かって歩いていった。
まぁ~みんな綺麗だわー…。
私は今からこの子たちと競うのか…。
ルームメイトたちの後について会場に入った私は驚愕した。
え…。
人多くない??
既に会場には30人ほどモデルが座っていて、緊迫した空気が流れている。
自分の名前をオーディションリストに書いて席に着いて、
待ってる私たちに紙が1枚配られて、オーディションの説明かと思ったら台本だった。
「はい、じゃ~1番の方~」
会場スタッフの女性の支持と共にオーディションが始まり、モデルが1人前に立った。
CMのシーン設定の説明が終わると共に、動画を回される。
「よ~い、アクション!」
の合図で前のモデルが一気に役に入り込み、見事に演じ切っていた。
女優並み…。
海外出身のモデルたちだからか、やり切っている感というか恥ずかしがらないところが本当に凄くて、
中身日本人の私からしたら、今から私もこれやるんですか?って焦りしかなくて既に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
目の前では、3つぐらい違うシーン設定、各1分半ほどの子芝居が繰り広げられていた。
1シーンがなげぇ…。
会場スタッフ:「はいじゃあ~最後のシーン。カメラに向かって踊ってください。」
…踊るんですか……???!
スタッフの指示と共にノリノリの曲が流されて、同じモデルがカメラに向かってセクシーダンスを1分ほど披露しだして、
そしてまたそのダンスが上手い…。動きちゃんと変えてるし、様になってるし。
しかも他のモデル30人の目の前で堂々と…
完全に公開処刑だわ…。別室でやらないなんて、ほんと悪意しかない。
で、座って待っているモデルは演じている子をじっと観察していて、
これ1番の子完全に不利だろって思いながら、2番目、3番目の子たちが順番にオーディションを終えていくのを私は眺めていた。
1人に対して5分ほど、
で会場には35人程いるから、時間かかるってこういうことなのかって納得。
待っている間も次から次と新しいモデルが会場に入ってくる。
結局2時間程待ち、ついに私の番がやってきた。
もう…この2時間本当に気が気じゃなかったよね…。
前に立って更に感じるけど、他のモデルの視線が痛いほど突き刺さってくる…
緊張で台本に書いていることを思い出すのが必死で、
感情移入が全くできていない、まさに棒読みの演技を5分間披露した。
最後の踊りもま~若いモデルというより、おばちゃんが躍ってるような動きになってしまって、どこでそんな動き身に着けたんだみたいな、
セクシーにもほど遠い。
1分がめちゃくちゃ長くて、もともとないネタを絞り出して踊ってるから、同じ動きばかりになってしまうし、1分終わった頃にはやたら息切れしてるし、
抹消したい思い出が出来上がってしまった。
帰りは渋滞に巻き込まれて2時間以上かかりやっとのことでみんなで帰宅。
車に乗ってる時間だけで計3時間以上。ちょっとした日帰り旅行だけど、現実はそんな良いものでもなかった。
少しでも自分の心を癒そうと思って、
最初だけ熱いシャワーに飛び込み、お湯が冷めていくのを棒立ちで待った。
悔しさと絶望感と恥ずかしさでいっぱいで、
これからこういうオーディションが続くのかと考えると気が重くなった。
この日から私はトイレで1人、セクシーダンスの練習を始めた。
モチベーション
★★★3
ピュア度
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★33
セクシーダンスのダサさ
★★★★★★★★★★★★★★★15
このストーリーは実話に基づいています。
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