海外モデル契約90日
8日目:地獄の抜き打ちテスト
朝起きるとマネージャーから連絡が入っていた。
朝と言うより既に昼前。
昨夜のモデルナイトから帰ってきたのは結局夜中4時。気強めベネズエラ美女はそのままスリ―サム男のところに行ってまだ帰っていないみたい。
キッチンで軽く軽食を作っていると他のルームメイトたちも部屋から出てきた。
ブラジル美女はいつも通り下着姿で寝ていたみたいで、そのままリビングに登場。ソフトフェイスが微笑みながら可愛く挨拶をする。
「おはよ~。」
ロシア美女はメンズTシャツ1枚をダボっと羽織って髪の毛をくしゃくしゃのお団子に束ねながら部屋から歩いてくる。
寝起き早々既に様になっている美女たち。
どうでもいいんだけど、下着姿で寝る子の気がしれないのは私だけなのか。
昔から胃腸弱めの私は、寝る時に何らかの布が無いと次の日お腹が痛くなってしまう体質。
どうでもいいんだけども。
私「マネージャーからの連絡見た?午後みんなで事務所に行かないといけないみたい。」
特に何の用事とかは書いておらず、時間指定だけがされていた。
毎週支給される生活費かな?
私たちは毎週事務所に足を運び、その週の生活費を現金で受け取る。
昨日飲みすぎたこともあって二日酔い気味の私たち。
事務所に行く時間が朝指定じゃなくてよかったとホッとした。
30分ほどすると玄関のドアが鳴り、気強めベネズエラ美女が帰ってきた。
「あいつとの夜は楽しかったー?」
笑いながら3人で彼女をからかい、その後女子トークがさく裂。
昨夜の誰がイケメンとか、過去に誰と何があったとか、あの男はキスが上手いとか
ま~ネタが出てくる出てくる。
流石パリピ美女たち。
そして女子の下ネタは具体的すぎて怖い。
まあこの子たちのおかげで昨日私が楽しい時間を過ごせたのも確か。
*****************
シャワーを浴びて、軽くヘアメイクをして、アパートから歩いて15分の事務所にみんなで向かった。
午後3時。
特に変わりない様子で事務所に入り、マネージャーたちに挨拶を済ます。
相変わらず綺麗な事務所で、平日程人はいないけど、土曜日も変わらずマネージャー数人はパソコンに向かって仕事をしていた。
ヘッドマネージャーの前で気を引き締める私たち4人。
ヘッドマネージャーとはマネージャーの中でもいろいろと決定権がある人のこと。社長の次に権限を持っている彼女は、現地出身だけど、英語を流暢に話す、厳しめのビジネスウーマンって感じの人。
ヘッドマネージャー:「クライアントから何件か苦情が入ってるからみんなのサイズを測り直しているの。」
…は…?
その一言で私たち4人の表情が一気に曇った。
抜き打ちですか?
やばい…。
契約書に記載されていることを思い出す。
現地到着と共にサイズを測られるんだけど、その数値から1センチ前後サイズが変わっていると警告、1週間以内にもとの体型に戻さないと毎週支給される生活費が3割ほどカット、
2センチ以上前後していると警告もなしに即カットされる。
やばい…。
昨日の夜中に肉なんか食べてる場合じゃなかった。
しかも胃にはまだお酒が残っているし、かなり飲んだから体もむくんでいるし。
シビアすぎる。
しかも週末きっとみんなが遊びに出かけたことを想定してわざと次の日に抜き打ちテストを実施しているように感じてしまった。
私たちからお金を取る口実のようだ。
というか1センチなんて日によってずれることぐらいあるだろうし、
女だと生理前とかも影響してくる。
マネージャーが順番にメジャーでスリーサイズから測っていき、紙にメモを取っている。
前と同じようにバストの時は思いっきり胸張って、ウェストでは思いっきり引っ込めて、
測られている間、焦りで心拍数が上がっていることが分かるんだけど、もう既に少し諦めモードで。
さすが毎日体型管理をばっちりこなしている気強めのベネズエラ美女は何の変化もなく、
案の定私と、ブラジル美女はウエストとヒップが1センチオーバーで警告をくらった。
ヘッドマネージャー:「1週間以内にもとの体型に戻してね。」
他人事のように言うマネージャー。
私と同じ部屋のひょろひょろロシア美女の番になり、マネージャーの表情が険しくなる。
元からめちゃくちゃ細い彼女は少しぐらい太った方がいい気がする。
ヘッドマネージャー:「ヒップが2センチオーバーしてるわよ。スタジオで用意されているズボン履けなかったらどうするつもりなの?」
この子が履けなかったらきっと世の女性誰も履けないからそれはデザイナーに問題がある。
そんなこと思っていても、マネージャーに言えるはずもなく。
サイズが測られた後に今週の生活費が1人ずつ渡された。
ロシア美女のぶんは容赦なくカットされていた。
私たちにお金を渡すヘッドマネージャーがもはや悪魔にしか見えない。
元から支給されている生活費は、最低限しかなくて常に節約しながら生きている私たちだから、それの3割を引かれるのはかなり痛い。
暗い表情で事務所を後にする私たち。
帰りの道で、我慢できず愚痴をこぼした。
私:「いやほんと、めちゃくちゃすぎない…?他の事務所もこうなのかな?」
世界中で契約をこなしてきた先輩モデルの彼女たちによると、ほとんどの事務所がスリーサイズを頻繁に測るらしい。
気強めベネズエラ美女:「まぁ、こういう業界だから。」
さすが4人の中で一番仕事をとっている気強め美女は厳しさを分かっている。
かなり落ち込んでいる様子のひょろひょろロシア美女が隣でボソッと言った。
「私今週、生き延びれるかな。」
1日半箱ぐらい吸う彼女は生活費のほとんどがタバコに消えていく。
こういう業界かもしれないけど、流石に酷すぎないか…?
90日間生活が保障されるはずの契約なのに、それすらも危うくない?
今まで仕方がないって受け入れていた私が、ここにきて初めて事務所に対する不満を覚えた。
アパートに帰るまでにある小さいスーパーを横切った。
買おうと思っていたフルーツ、今日は我慢しようかな。
モチベーション ★★★3
ピュア度 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★28
事務所への不満 ★1
このストーリーは実話に基づいています。
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