海外モデル契約90日
34日:闇仕事のディーラー
昨日、契約違反をしている事務所に対して私たちモデルはボイコットをしたんだけど、結局マネージャーたちに呆気なく押さえ込まれ無能な私たちはそれに耐えるしかなくそのまま次の日を迎えた。
昨日のエピソードがこちら↓
-
タイトルなんてどうでもいい。33日目:モデル VS 事務所の戦い~モデルたちのボイコット~
続きを見る
私は午前中の撮影を終え昼過ぎアパートに帰ってきたら、ちょうど寝起き全身タトゥー上半身裸のイケメンがメンズたちの部屋から出てきて慌てながら言った。
マフィア子分:「事務所がブラックジョブの取り調べを始めたらしい!」
ブラックジョブとは
事務所と契約中にも関わらず、モデル個人とクライアントで直接やり取りしてもらった案件のこと。
完全に契約違反なんだけど、実は結構な割合で海外モデルたちが引き受けているとか。
最初聞いた時は、写真公開されたらバレるんじゃないの?って思ったけど、規模が小さい仕事だったり社内でしか使わない写真だったり、すり抜け方はいくらでもあるみたい。
契約中に事務所から支給される生活費は生活水準ラインぎりぎりのところで、正直モデルたちが他の稼ぐ手段を考えるのは無理もない話なんだけど、
所属モデルがオーディションで取った覚えのないCMに出ているのをマネージャーがテレビで目撃したのがきっかけで、この取り調べは始まった。
CM…。
全国公開しちゃってる。
バレるでしょうね、そりゃ。
部屋でテレビ見ながらくつろいでいる、びっくりしたマネージャーの顔が頭に浮かぶ。
そんなおバカモデルのせいで他のモデルが全員巻き込まれることに。
その後、他のモデルアパートに住んでる子たちから情報が次々と入ってきて、事務所は1人1人モデルを呼び出して狭い部屋でマネージャー2人対モデル1人で、薄情するまで帰らせてくれないとか。
もはや尋問って言うんじゃないの…それ?
昨日といい今日といい、なかなかのパワープレイを見せる事務所。
クライアントから情報が入っているみたいで、事務所は既に誰がブラックジョブをしているのかを突き止めているらしく尋問は本人に吐かせるためのものらしい。
本当に、契約が始まってからというもの私の周りで起きていることが異常すぎて、
これって普通海外モデル契約時に起きることなの?って聞いたら
いや~流石に尋問は初めてだなってみんな。
ってことはボイコットは以前もあったんですか?
そしてうちのアパートにも実はブラックジョブをしてるモデルたちがいる。
メンズ全員とリアルバービーの4人。
過半数じゃないか…。
そしてそして、うちのアパートには実はそれを仕切っている奴がいる。
最年長ベテラン、渋い顔をしたイケメンモデルでダンディーって私が勝手にニックネームを付けたルームメイトがいるんだけど、実は彼が一番ブラックジョブをしていて、しかも他のモデルたちにその仕事情報を横流しにしている、言わば闇仕事のディーラー。
彼は頭が切れる。業界にも長くいるからブラックの契約に縛られながらも自分ですり抜ける術を見つけていた。
そして優しくて女の扱い方も上手いからモテる。
うちのアパートのメンズは3人ともかっこいいと他のモデルたちからも騒がれていて、オーディション時もあのイケメンの3人と住んでるのねって羨ましがられるんだけど、この3人がディーラーとマフィアと自由人で、イケメンだったら他はどうでもいいんですか?って気になってしまう。
キャラの濃い美男美女たちとの出会いがこちらのエピソード↓
-
タイトルなんてどうでもいい。17日目:キャラ勢揃い
続きを見る
で、この闇仕事を回す立ち位置にいたダンディーから仕事を貰っていたレディースモデルたちが見事に次々と彼を名指しにしたみたいで、
自分のルームメイトたちを守るためなんだろうけど、その標的になってしまったベテラン。
仕事情報をもらっていたのに何とも酷い話に聞こえる。
それを聞いて流石に愚痴をこぼす、普段は優しいイケメン。
ダンディー:「ブラックジョブをしたいって言ってたから手伝っただけなのになんで俺だけ名指しにされなきゃならなんだ!」
まぁ彼が怒るのはもちろん理解できるんだけど、聞いた話彼女ができて落ち着く前はなかなかいろんな子に手を出していたからか、それが完全に裏目にでてしまっていた。
オーディションの待ち時間に美女たちの話を盗み聞きしていたけど、外でモデルとチューをしていた彼を、他事務所のモデルが目撃してその場で彼をビンタしていったとか。
そんな道端で堂々と浮気をしていらっしゃったのね。
まぁそんなこんなで、彼は見事に美女たちからの逆襲を受けていた。
仲間意識の強い女ほど怖いものはないのかもしれない。
ルームメイトたちと話していると、マネージャーから早速連絡が入った。
今すぐ事務所に来るようにと呼ばれたのが、ダンディー、侍、そして私。なぜこの3人だけ先に呼ばれたのかは分からないけど、
行きの道でもかなり焦っているイケメン2人。そして1人はディーラーだから一番危ない立ち位置にいる。
事務所に到着し、いつも通りマネージャーたちに挨拶をし部屋の外で椅子に座って呼ばれるのを待つ私たち。
数分待っているとレディースモデルが泣きながらその部屋から出てきて、私たち3人は顔を見合わせた。
そして1番最初に呼ばれたのがよりによって私…。
重い腰を上げ、狭い部屋に入るとテーブルを挟み男マネージャー2人が座っていて、向かいの椅子に座るように指示されたんだけど、
もう尋問。まさに尋問。
刑事もののドラマの取り調べ室でのワンシーンそのまんま。
カツ丼かラーメン頼んでもいいですか?って
焼うどんでもいいですよって。
マネージャー:「もう知ってるかもしれないけど、今日呼んだ理由は…」
そこから長い前置きに入るマネージャー。
マネージャー:「ブラックジョブをしたことはあるか?」
この質問に対しては本当にブラックジョブを引き受けたことはなかったから特に焦らなかったんだけど、次の質問で私は黙り込んだ。
マネージャー:「ブラックジョブをしてるモデルを知っているか?」
……。
言えるわけがない…!
自分のファミリーを裏切れるわけがない!
私:「……知らないです。」
渋々私は嘘をついたんだけど
マネージャー:「本当に知らないのか?」
まぁそうなりますよね。
その後も本当か?本当です、を繰り返すこと20分。
バレているであろう嘘をつき通し、言う気配を示さなかった私を見てマネージャーたちは諦めたのか、やっとのことで地獄の尋問から解放された。
どんよりした顔をして部屋から出てきた私を見て更に焦るメンズ2人。
次に侍が呼ばれて、また30分ほど経った後に私と同じようにどんよりした顔で部屋から出てきて、
最後にダンディーが呼ばれて、どんより顔製造室に入っていった。
私たちが一番心配している彼。
5分ぐらいすると、テーブルの叩く音とともにマネージャーたちの怒鳴り声が聞こえてきて、もう完全に情報が入っているから事務所も強気に出ているし、それを聞いて私と侍は心配そうに目を合わせるんだけど、私たちにできることは何一つなくて。
他のマネージャーから、待っている私たちに先に帰るように伝えられた。
帰り道、お互いに一言も喋らず歩く私と侍。
こんな静かな侍初めて見た。
侍:「俺は自分がブラックジョブ引き受けてたこと正直に言ったよ。仕事を回していたあいつが一番やばいと思う。」
アパートに戻るとマフィアとリアルバービーがリビングにいて、何があったかを全て伝える私たち。
リアルバービー:「えー怖い!」
マフィア:「もうここまで来たら正直に言うべきだろうな。隠したところで何の意味もない。」
そこにちょうど撮影からダンディーの彼女、イラン系エキゾチックな顔立ちの超絶美女が帰ってきた。
エキゾチック美女:「撮影中に聞いたんだけど、今大変なことになってるよね!!」
侍と私が何がリアルタイムで起きているのかを彼女に説明して、彼氏が今一番危ない状況にいることを伝えると、
「え、どゆこと?」って顔をするエキゾチック美女。
何となくだけどね、
さっきからね、
話が少し噛み合っていない気はしていたんだけどね、
多分気付いてないのね。
あなたの彼氏が闇仕事のディーラーってこと。
自分の彼氏がディーラーだと言う事実に驚くエキゾチック美女。
そしてそれに驚く私たち。
えー!
知らなかったのかー!
彼氏言ってなかったのかー!!
まさかの展開でその場のみんなが驚いてたんだけど、
彼女が一番ショックを受けていて泣き出してしまった。
またその泣き顔がお美しいこと。
自分の泣き顔なんてブサイクすぎて人に晒せないレベルだわ…
で、そのまま彼女は部屋にこもってしまって、なかなか出てこなくて心配になったから様子を見に行ったんだけど、
エキゾチック美女:「カリナ、彼は本当にしてないの!」
って彼女。
愛する彼氏を信じてあげたいのは痛いほど分かる。
分かるんだよ!
でもね美女、
証拠が揃いすぎている。
何なら本人が普通にみんなに言ってしまっている。
ほんと、よく一緒に住んでいる彼女にここまで上手く隠せたなって感心してしまう。
夜、ダンディーはマネージャー2人と共にアパートに帰ってきたんだけど、
何も喋らない彼は、彼女をハグしてそのまま荷造りを始めた。
契約違反そしてビザスポンサー以外の会社と仕事をしたことから不法就労となり、容赦なく契約を解除され今すぐに国を出るようにと伝えられた彼。
2人の別れが切なすぎて、こっちが泣けてくる。
ベテランモデルはそのまま入国禁止の身となった。
モチベーション:
0
ピュア度
★★2
事務所への不満:
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★超マックス
このストーリーは実話に基づいています。