海外モデル契約90日
25日目:私の就職活動の秘密
朝起きると、可愛がっていた大学の後輩からラインが入っていた。
5月。
日本で就職活動真っただ中の4回生の彼は、忙しい日々を送っていて久々の連絡だった。
ライン:「カリナさん。会社を選ぶ時、何が決め手になりましたか?」
可愛い後輩よ、よく聞くんだ。
聞く相手を完全に間違えている。
君の先輩は会社には行っていない。
彼が聞いてくるのも無理はなくて、
っていうのは、きっと私が今頃海外でモデルをしていることを彼は知らない。
私には言わないといけないことがあるからこの場を借りて言いたい。
実は私は、大学4年生頭に内定を断り、無職が確定していた。
そしてそれを大学の誰にも言ってなかった。教授にも、友達にも。
ニートになる気満々で、
って言うのは嘘だけど、モデル一本で食べていく気満々だった私。
3年生末、
みんな始めてるし~私もそろそろやるか~っていう思いのもと始めた就活。
そのまま3月初めに東京のITスタートアップから口頭による内定を頂いて、
「もっと大きい企業に行くべきだから、ちゃんと考えて。それでもうちに来たかったらおいで。」
と優しい社長さんに言って頂き、
そしてその後私はその優しい社長さんに一度も連絡を取らなかった。
その日を境に私は就活を止めた。
そして私はみんなに言い続けた。
私:「東京のITスタートアップ行くね~ん!( ´∀` )」
口頭での内定しかない企業の名前をずっと出す私。
周りがひいひい言いながら説明会や面接やインターンシップに行ってる中、
私はモデルの契約を取るのにひいひい言っていて、
毎日写真を撮って海外の事務所にメールを送る日々。
まぁこれもある意味就活か。
私はもともとサンフランシスコの大学に行っていたいたんだけど途中で帰国し、
2年遅れで関西の公立大学に入学した。
うちの大学は航空宇宙工学部が日本一なこともあって就職率も高く、何かと良い意味で知られていて、
学歴フィルターもかからないし、ちゃんと名が通っている企業に勤めている友達が多い。
4年生6月になり、みんな徐々に就職先を決め始めて、会計のゼミに入っていたからか
「税理士」とか「公認会計士」とか「銀行員」とか、
メーカーも大手を挙げてくるし、
ま~そんな肩書きがキラッキラッな友達に囲まれて、
私はモデル一本で食べていきたいなんて言えるはずもなく、
私たちがどこに就職するかは、ゼミの教授の評価にも関わるわけで、
まさか25歳目前の女がモデルで海外に行きたいなんて、やめておけって全力で教授に説得されることは分かっていた。
うちの大学の場合、就職率の統計をとるためか、卒業前にどの企業に進むのかっていう書類を書いて提出するんだけど、
ま~~迷いに迷う私。
書くことがないからね。
「事務所も仕事も決まってない自称モデル」なんて書いたら教授から呼び出しでもくらうんじゃないかって思ってたし、
どの企業名を書こうかな~とか、今のバイト先でも書いておこうかな~とか、結局私は正式な内定すら貰っていないその東京のIT企業の名前を書いた気がする。住所とかもウェブサイトから引っ張ってきて。
4年生の時はうちの大学の場合、1年間卒論に集中するんだけど、1対1でゼミの教授に会う機会が多くて、
卒論意外にも進路の話ももちろん出てくるわけで、
就活の調子はどうですか~?とか、もう内定はもらいましたか~?とか
その時間が私にとってはま~~~地獄で
嘘に嘘を積み重ねて、毎回辻褄を合わせないといけないから大変で、
一ヶ月あいて、また卒論の訂正とかで教授と面談がある時は、前回なに言ったんだっけ?って思い出すところから始まって、
卒論よりももはや嘘を思い出すことで頭がいっぱいの私。
教授:「スタートアップは福利厚生が少ない所もあるから、そこをちゃんと調べた方がいいです。
東京の企業だったら、家賃補助はどれぐらい出るんですか?」
って教授に聞かれた時に
家賃補助………これは的外れな数字は言えない……スタートアップって家賃補助平均どれぐらい出るんだ……
って考えて、咄嗟に出た答えが、
私:「家賃補助、出るんですかね、うちの会社?( ´∀` )」
バカ丸出しの返事をしてしまって、
2秒程沈黙があってヤバい答えだったことに気付いた。
そんなことも知らずにこの子はこの企業に進もうとしているのか?って思われたに違いない。
毎年4月5月に一斉に新卒枠が解禁されて、
内定が決まらなかったら人生の終わりみたいに捉える学生や、出来損ないだったり就職浪人っていうレッテルを張られる考えが私はもの凄くアンチで
アホかいな、22で人生は終わらん。むしろ始まりや。
って当時から思っていたし、
自分のしたいことも分からない子たちがスーツを着て特に興味のない企業の面接を受け、よく分からないシステムが成り立ってるなって思っていたのが正直なところ。
まぁだからこそ私はきっと将来性も全く見えない、日本の就活システム以上によく分からない海外のモデル界に飛び込んだんだと思うけど。
卒業する最後の最後まで私はこのプレッシャーの多い就職システムを理解できず、自分の進路も周りから隠して、徐々に大学の友達とは距離ができた。
で、大学を無事卒業し友達はみんな就職して、私はモデル契約で海外に来てる今。
みんながスーツを着て、同僚との飲み会で社会人デビューしてますよ的な写真をインスタにアップしている中、
私は海外のクラブで踊っている動画をあげたり、いきなりモデルの写真をアップする頻度が上がったり、
こいつはいったい海外で何をしてるんだ、
東京のスタートアップはどうした、
って不思議に思われているかもしれない。
周りから口うるさく言われないため、そしてモデル就活に集中するためにも、表上もらっておきたかった内定だった。
優しい社長さん、その節はありがとうございました。
そして、就職先が決まらずプレッシャーに駆られている学生に一言。
君の人生は終わりじゃない。むしろ始まりだ。
モチベーション:
★★★★★★★★★★★10
ピュア度:
★★★★★★★★★★★11
私が嘘をついた人数:
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★+50
このストーリーは実話に基づいています。