海外モデル契約90日
3日目:駆け出しモデル生活のリアル
海外でのモデル契約開始からまだ3日しか経ってないんだけど、既に驚きの連続だったからここでまとめて報告したい。
まずこの「モデルアパート」なんだけど、私が勝手に想像していた煌びやかなモデルアパート生活とは程遠いものだった。
アパートのクオリティーがショボすぎる。
8畳ほどのベッドルームが2部屋と共有スペースのリビングとキッチン。各部屋にモデル2人がシェアする形で、部屋ごとに1つ付いているトイレはユニットタイプ。
シャワーは最初は熱いんだけど、浴びているうちにどんどんお湯が冷めてくるし、
シャワーのドアの閉まりは悪くて水が若干外に流れていく。
海外特有の、蓋を開けてみるとなかなかの欠陥住宅ってやつだった。
蓋を開けなくても入った瞬間からなんか怪しかったんだけどな。
アパートそのものよりも管理の杜撰さが目立つ。
昨日洗濯物を干している際に、なんかブンブン聞こえるなって思って、バルコニーから顔出して壁すぐ横のよく分からないスペースを覗いたら
直径30センチほどの巨大なハチの巣があることに気付いて悲鳴をあげる私。
危なすぎるだろ…。
なんでこのサイズになるまで誰も気付かなかったんだ。
すぐに事務所に連絡し業者が駆除しにくる始末。
Wifiの調子も絶好とは言えないし、遅かったりいきなり繋がらなくなったり。
引越し3日目にして既に停電が1回。
たまたま家にあったアロマキャンドル何個かに火つけてリビングで美女たちとムーディーな時間を過ごすことになった。
甘ったるい香りが苦手な私は途中でギブアップして自分の部屋に戻ったけど、狭いシェアハウスだから家中その匂いに包まれてて…
みんなでシェアしている冷蔵庫は何故か1人暮らし用の中型の冷蔵庫で、スペースが足りないうえに同じものを買うとどれが誰のものか分からなくなりがち。
食器は使った後そのままにする子もいるから、お腹空いて何か作ろうとするとまず皿洗いから始まる。
洗濯機ももちろん1台だから女の子4人となると使用頻度も高く、自分のものを洗いたい時は大抵既に使われていて、終わるのを待たないといけなかったり、終わったとしても前に使った子が洋服を取り出すのを忘れている場合もあるし、狭いバルコニーの干すスペースも取り合い。
完全に1人か2人用の造りのアパートを4人でシェアしている。
キッチンで料理をしている際に早速ゴキブリ出没。
海外のゴキブリってなんであんなデカいんだろう。
羽をバタバタさせながらそのデカい体が重たそうにブーンって飛びだして
モデル4人でキャーキャー言いながらスプレー振り回して、
虫の怖くないソフトフェイスブラジル美女が
ゴキブリの後を追い、靴で一叩きして退治。
美女がゴキブリを追いかける姿はなかなかシュールなものだった。
事務所から支給される生活費が限られていることと、体型管理のためにもみんな自炊するから、キッチンのゴミの溜まるスピードは異常に早い。
ゴミにゴミをバランスよく重ねてジェンガみたいになってて、
さぁ誰かゴミ出ししに行きたい人いる?私は行かないけどね、
みたいなサイレントゲームがここ3日毎日繰り広げられている。
海外旅行行く度に実感するけど、日本はやっぱり全体的に清潔で良い国なんだわ…。
同じ部屋のひょろひょろロシア美女はなかなかのヘビースモーカーで、リビングのテーブルにタバコの吸い殻がそのまま残されていることがあり、部屋中に臭いが充満しているし。
掃除のおばちゃんが週3回共有スペースのキッチン、リビングそして各部屋のバストイレを掃除しに来てくれるんだけど、ま~掃除の仕方が適当だし、言葉も全く通じないし。
日本出国前に、素敵なモデルアパートに住める~るんるん
って心躍らせていた自分の姿は今は一ミリもない。
駆け出し海外モデルが通る道はそんな甘いものではなかった。
恋愛事情やアパート事情を含め、モデルアパートのドキュメンタリー番組を作るとバカ受けするんじゃないかなって思ってしまう。
テラハの荒れてるバージョンが出来上がる気がする。
今日午後初めて、アパートから歩いて15分ほどの事務所に顔をだした。
日本にいた時のスカイプ面接で見た顔が何人かいて、自分が実際今その人たちと会っているんだって考えると不思議な気分になった。
マネージャー:「日本から遠かったでしょ。ゆっくりできてる?」
この数日間を思い返してみると、ゆっくりとは正反対のもので答えに困ったけど笑顔で頷いておいた。
私が想像してたよりずっと大きい事務所で、1階のオフィスではマネージャーたちがパソコンに向かい仕事をしていた。
その後ろの棚に所属モデルの写真がずらーーって並んでて、
うわ~人数多いんだ…しかもみんな綺麗だわーーー
って世界レベルのモデルたちに圧倒されてしまった。
レディースモデルのすぐ下の棚にはメンズモデルの写真が並んでいる。
男の子たちもみんなイケメンだな~って思ってたらある欧米系美男子の写真が目に留まった。
…出た…!昨日のスリーサム男だ…。
他のメンズモデルよりも一際レベルの高いルックスの彼。そりゃこんなカッコよかったら遊び人にもなるわな。
所属モデルの一員として、私の写真もここに並ぶことを考えると嬉しくなった。
モノトーンの服で来るよう指示され、事務所2階にあるスタジオで、書類選考に必要なスナップ写真や自己紹介動画、モデルウォーク動画とポージングの動画を専属のカメラマンに撮ってもらう。ライトとかもばっちりで本格的なスタジオだった。
その次が地獄のサイズ測りの時間。
身長、体重、スリーサイズ、足の長さ、手首の周り、首回りから頭の周りまで
そんなところのサイズいつ使います?
って思うようなところまで測られて、
身長測る時は、伸びるんだ~伸びろ~って無駄な呪文を唱えてみたけどむしろ0.5ミリ縮んでいた。きっと寝不足とストレスだ。
バスト測られる時は胸張って次にウエストを測られる時は息が止まるぐらいお腹引っ込めてって、立っているだけの測られている側もいろいろと忙しい。
最後に1週間分の生活費を渡されて、マネージャーたちに挨拶をして事務所を後にした。
その後ルームメイトたちと合流し、アパートから近くのスーパーに連れて行ってもらったんだけど、
日本食や調味料が驚くぐらいない…
醤油がおいてあるけど、絶対醤油以外の調味料も入ってるだろっていうようなエセ醤油。
限られた生活費で油から調味料、サランラップとかまで最初は自分の使うもの全てを揃えなくてはいけないみたい。
やばい、今日だけで1週間分の生活費が飛んでいきそうだ…。
ってか生活費少なすぎるだろ。
*****************
夜、気強めベネズエラ美女がキッチンで軽食を作っていた。
毎日欠かさずジムに行き、アパート内で一番仕事をとっている彼女は食事制限もかなりストイック。
今日もいつも通りセクシーな格好をしている。というよりきっとこのナイスボディーだと、何を着てもセクシーに見えるんだと思う。
全体的に引き締まっているけど鍛えすぎた感じではなく、お尻や胸など必要なところはちゃんと残っている。
完全にビクトリア・シークレットモデル体型の彼女は、ルームメイトたちからも羨ましがられている。
茹で上がった卵の殻を剥いているみたいで、卵サンドでも作るのかと思ったらそのゆで卵を2つに割り、黄身を取り除き始めた。
そしてその取り除いた黄身を全てゴミ箱に捨てた。
ゴミ箱に捨てた…。見間違えたのか私は…?
私:「黄身…今捨てた??なんで?」
彼女の手が止まり、呆れたような視線をこっちに向けてきた。
気強めベネズエラ美女:「卵1つに含まれているタンパク質量は6グラム。
そのうち白身に含まれているのがおよそ70%、黄身には30%のタンパク質しか含まれてないうえに筋肉作りには必要ない脂質が高いの。」
淡々と説明を続ける彼女。
「あなたがさっき食べてたピーナツバターサンドだけど」
日本食を作るのが大変で、いつの間にか私はアメリカ人みたいな食事になっていた。
キツメ美女が続けた。
「あれは、糖質と炭水化物の塊よ。そしてフルーツも糖質だから遅い時間にはオススメしない。」
私の食べてるものもちゃんと見てるんだな…。
最後に吐き捨てるように私に言った。
「あっという間い太るわよ。」
おー…。
気が遠のく気持ちだった。
知識量の少なさと彼女の言ったことを消化するスピードが追い付いてなくて、感心と衝撃で棒立ちの私。
そして私はこのキツめ美女が少し苦手かもしれない…。
でも彼女はこのナイスボディーを手に入れるために、もの凄い努力をしてるんだ。
海外で競争率の高い契約を獲得するだけでも大変なのに、その後の仕事を取って勝ち残っていくのはもっと大変。
本気でモデル界のトップに駆け上がろうとしているルームメイトたちを見て、
わーい契約取れた~って浮かれていた自分が恥ずかしくなった。
とりあえずピーナツバターサンドはもう止めよう。
モチベーション
★★★★★★★7
ピュア度
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★34
浮かれてた自分に気付いた度
★★★★★★★★8
このストーリーは実話に基づいています。
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